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腎臓疾患:低分子量Gタンパク質Rac1によるミネラロコルチコイド受容体機能の修飾:タンパク尿を伴う腎臓病への関与

Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1879

ミネラロコルチコイド受容体の阻害によって、タンパク尿をともなう腎臓病の臨床転帰が改善することが示されている。しかし、腎臓病におけるミネラロコルチコイド受容体依存的な転写活性の制御機構についてはほとんど明らかになっていない。本論文では、低分子量Gタンパク質Rhoファミリーに属するRac1の、in vitroおよびin vivoの両方でミネラロコルチコイド受容体シグナル伝達の強力な活性化因子として働くという新しい役割を明らかにした。HEK293細胞での一過性遺伝子導入実験によって、恒常的活性型Rac1(CA-Rac1)がミネラロコルチコイド受容体依存的なレポーター活性を高めることが明らかになった。これには、ミネラロコルチコイド受容体の核移行の増加がともなっていた。CA-Rac1は糸球体上皮細胞でもp21活性化キナーゼのリン酸化を介してミネラロコルチコイド受容体の核集積を促進した。Rho GDP解離抑制因子α欠損マウス(Arhgdia-/-マウス)では、大量のアルブミン尿や糸球体上皮細胞傷害を含む腎機能異常と関連して、腎臓での活性型Rac1およびミネラロコルチコイド受容体シグナル伝達の増加が認められたが、RhoAには影響がなく、また血中アルドステロン濃度に変化はなかった。Rac特異的な低分子阻害剤による薬理学的介入によって、このモデルでのミネラロコルチコイド受容体の過剰な活性と腎傷害が低減した。さらに、Arhgdia-/-マウスでのアルブミン尿と組織学的な変化がミネラロコルチコイド受容体の阻害によって抑制されたことから、Rac1とミネラロコルチコイド受容体の相互作用が担う病的な役割が確認された。本研究は、Rac1とミネラロコルチコイド受容体の間のシグナルクロストークがミネラロコルチコイド受容体活性を修飾する証拠を示し、また、Rac1が慢性腎臓病の治療標的であることを明らかにするものである。

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