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アルツハイマー病:グルタミニルシクラーゼ阻害はピログルタミン酸殘基をもつAβとアルツハイマー病様病態を軽減する

Nature Medicine 14, 10 doi: 10.1038/nm.1872

N末端が短縮したAβペプチド、特にピログルタミン酸(pE)修飾を受けたものは量が多く、タンパク質分解に抵抗性であり、凝集が迅速で、神経毒性であることから、アルツハイマー病発症につながる病態発現カスケードの開始に重要であると考えられている。我々は、in vivoでグルタミニルシクラーゼがN末端pE形成を触媒することを見いだした。グルタミニルシクラーゼの発現はアルツハイマー病患者の脳皮質で増加しており、pE修飾型Aβの出現と相関していた。グルタミニルシクラーゼ阻害剤の経口投与は、アルツハイマー病の2種類のトランスジェニックマウスモデルと新たなショウジョウバエ(Drosophila)モデルの1つで、Aβ3(pE)-42負荷を減らした。マウスへの投与ではAβx-40/42の減少、プラーク形成およびグリオーシスの低下が起こり、文脈依存記憶と空間学習試験での成績を改善した。これらの結果は、Aβ3(pE)-42が自己凝集ならびにAβ1-40/42との共凝集により、Aβ凝集の種(シード)として働くという仮説と合致する。したがって、Aβ3(pE)-40/42ペプチドは、ニューロン機能の障害に極めて強力な作用を持つAβ形であると考えられる。グルタミニルシクラーゼ阻害による脳のpE-Aβの減少は、アルツハイマー病治療の新たな選択肢となり、家族性デンマーク型認知症などの他のアミロイドーシスへの応用の可能性も考えられよう。

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