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アルツハイマー病:アルツハイマー病ではシクロフィリンD欠損がミトコンドリアおよびニューロンの異常状態を緩和し、学習と記憶を改善する

Nature Medicine 14, 10 doi: 10.1038/nm.1868

シクロフィリンD(CypD、Ppifにコードされる)は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の必須の要素の1つであり、この孔の開口は細胞死につながる。本論文では、CypDとミトコンドリアのアミロイドβタンパク質(Aβ)との相互作用が、ミトコンドリア、ニューロンおよびシナプスのストレスを増強することを示す。CypDを欠く大脳皮質ミトコンドリアは、AβやCa2+によって誘導されるミトコンドリアの膨張と膜透過性変化に抵抗性がある。また、こうしたミトコンドリアではカルシウム緩衝能力が高まり、ミトコンドリア活性酸素の生成は低下する。さらに、CypDの欠如はAβや酸化ストレスが誘導する細胞死をニューロンが起こしにくくする。CypD欠損が、アルツハイマー病マウスモデルで学習、記憶およびシナプス機能を相当度改善し、長期増強のAβを介する低下を軽減することは注目すべきである。したがって、CypDがかかわっているミトコンドリア膜透過性遷移孔は、アルツハイマー病の発症病理で観察される細胞およびシナプスの異常と直接結びつく。CypDの遮断はアルツハイマー病の治療戦略の1つとなるかもしれない。

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