Letter

振戦:アデノシンは振戦の深部脳刺激による軽減に重要である

Nature Medicine 14, 1 doi: 10.1038/nm1693

深部脳刺激(DBS)は、振戦や他の運動異常症の治療に対する神経外科的方法として広く用いられている。これに加えて、強迫症やうつ病を含む多くの精神疾患でのDBSの使用も現在検討されつつある。外科的に刺激電極を植え込まれた患者の数は急激に増加しているにもかかわらず、DBSの影響を仲介する細胞経路は不明のままである。今回我々は、DBSがATPの放出を顕著に増加させ、その結果としてATP代謝産物のアデノシンが蓄積することを示す。アデノシンA1受容体の活性化は、視床の興奮性神経伝達を抑制し、振戦やDBSがもたらす副作用を軽減させる。A1受容体アゴニストを視床内に直接注入すると振戦が抑制されるが、逆にアデノシンA1受容体が存在しないマウスでは治療域以下の刺激によって不随意運動と発作が起きる。さらに、我々のデータは振戦で内因性のアデノシン機構が作用することを示しており、これは非選択的アデノシン受容体阻害薬のカフェインが本態性振戦を誘発し増悪させるという臨床的所見を裏づけるものである。今回の知見は、A1受容体の活性化がかかわる非シナプス機構が振戦活性を抑制し、刺激誘発性の副作用を制限することを示唆しており、したがってDBSの有効性を代用あるいは改善する新たな薬理学的標的を提供するものである。

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