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癌:ユビキチンリガーゼgp78はKAI1を分解標的とすることにより肉腫転移を促進する

Nature Medicine 13, 12 doi: 10.1038/nm1686

転移は、癌による死亡の主な原因であるが、転移を引き起こす機構はあまりよくわかっていない。特に、肉腫として知られる、間葉由来の癌の転移に関しては解明が進んでいない。およそ10種のタンパク質が「転移抑制因子」の性質を持つことがわかっているが、これらのタンパク質がどのように機能し、どのように調節されているのかは、概してあまりよくわかっていない。Gp78(別名、AMFRあるいはRNF45)は、RINGフィンガー型E3ユビキチンリガーゼで、小胞体に不可欠であり、さまざまな基質の小胞体関連分解(ERAD)に関与する。本論文では、gp78の発現が、ヒトの進行性肉腫転移の原因となる役割を担っており、この転移促進活性にはgp78のE3活性が必要であることを報告する。gp78は、膜貫通型の転移抑制因子であるKAI1(別名、CD82)に結合し、分解標的とする。gp78を抑制するとKAI1量が増加し、腫瘍細胞の転移能が低下する。この抑制的影響は、同時にKAI1を抑制すると大部分がみられなくなる。これらのタンパク質間の逆向きの関係はヒト肉腫組織のマイクロアレイで確認された。従来の研究のほとんどは、転移抑制因子遺伝子喪失の遺伝的機序に着目していたが、今回の結果は、ユビキチンリガーゼによる転移抑制因子の翻訳後抑制と、それによる転移抑制的影響の消失に関する新しい証拠を示している。

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