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インスリン抵抗性:肥満により引き起こされるインスリン抵抗性における長鎖脂肪酸伸長酵素Elovl6の重大な役割

Nature Medicine 13, 10 doi: 10.1038/nm1662

インスリン抵抗性はしばしば肥満に合併し、2型糖尿病の発症要因となりうる。これまで知られているインスリン抵抗性を改善する治療法のほとんどでは、肥満や脂肪肝の改善が先行する。今回、この法則が必ずしも必須ではないことを示す。すなわち、インスリン抵抗性と高血糖は、肥満と脂肪肝が持続的に存在していても、肝臓の脂肪酸組成を変化させることにより改善される。我々は、パルミチン酸からステアリン酸への変換を触媒する伸長酵素をコードする遺伝子Elovl6を欠損するマウスを作製した。この欠損マウスを高脂肪食で飼育したり、レプチンを欠損する肥満モデルob/obマウスと交配させると、肥満になり脂肪肝を呈した。ところが、Elovl6欠損マウスは高インスリン血症、高血糖、および高レプチン血症を発症しなかった。このインスリン抵抗性の改善は、肝臓でのインスリンシグナル分子IRS-2(insulin receptor substrate-2)の回復と肝臓プロテインキナーゼCε活性の抑制を伴っており、結果としてAktリン酸化の回復が見られた。得られた結果を総合すると、肝臓の脂肪酸組成は、細胞のエネルギーバランスやストレスとは関係なく作用する、新たなインスリン感受性決定因子であると考えられる。この伸長酵素の阻害は、肥満が持続した状態においても、インスリン抵抗性、糖尿病、心血管病リスクを改善する新たな治療法となる可能性がある。

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