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癌:変異によるPTENの不活化は、T細胞白血病でNOTCH1阻害に対する耐性を生じる

Nature Medicine 13, 10 doi: 10.1038/nm1636

NOTCH1の機能獲得型変異は、T細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T-ALL)に頻度が高いことから、この受容体は、NOTCH1活性化に必要なタンパク質の切断を停止させるγ-セクレターゼ阻害剤のような治療薬の標的として期待されている。しかし、このような治療薬開発の意欲は、腫瘍の薬剤耐性、およびNOTCH1によって調節される発癌過程に関する知見が不足しているために低下しがちだった。本論文では、NOTCH1が正常T細胞および白血病T細胞で、PTEN(phosphatase and tensin homologをコードする)の発現およびホスホイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)-Aktシグナル伝達経路の活性を調節していることを示す。ショウジョウバエ(Drosophila malenogaster)を用いたNotch誘導型の腫瘍形成モデルではNotchシグナル伝達とPI3K-AKT経路は相乗作用を示し、さらに、ヒトT-ALLでは変異によるPTENの不活化は、NOTCH1の薬理学的抑制に対する耐性に関連がある。まとめると、これらの知見は、PTENの転写制御およびPI3K-AKT経路の調節が、NOTCH1によって活性化される白血病発症過程の重要な要因であることを明らかにしており、T-ALLに対する新たな治療戦略設計の基盤となる。

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