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癌:慢性ストレスは卵巣癌マウスモデルでの腫瘍増殖と血管新生を促進する

Nature Medicine 12, 8 doi: 10.1038/nm1447

ストレスは、免疫学的、神経化学的、内分泌学的諸機能に変化をもたらす場合があるが、癌の進行に果たす役割は明らかではない。本論文では、卵巣癌の同所性移植マウスモデルで、慢性的行動ストレスが組織内カテコールアミンの増加、腫瘍量の増大、および卵巣癌細胞の浸潤性増殖の促進を惹起することを示す。これらの影響は主に、β2アドレナリン作動性受容体(ADRB2にコードされる)による腫瘍細胞のサイクリックAMP(cAMP)プロテインキナーゼA(PKA)シグナル経路の活性化を介して生じる。ストレス下にある動物の腫瘍では血管新生が著しく増加し、VEGF、MMP2およびMMP9の発現が促進され、in vivoでは血管新生過程が腫瘍増殖に対するストレスの影響を仲介していることがわかった。これらのデータは、in vivoで行動的ストレスが腫瘍血管新生を増加させ、それによって悪性細胞増殖を促進する際の主な機序が、cAMP-PKAシグナル経路のβアドレナリンによる活性化であることを明らかにしている。また今回の結果は、卵巣癌の管理にADRBを介する血管新生の妨害が治療法として使える可能性を示している。

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