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副作用:癌治療薬メシル酸イマチニブの心臓毒性

Nature Medicine 12, 8 doi: 10.1038/nm1446

メシル酸イマチニブ(グリベック)は、慢性骨髄性白血病の原因物質である融合タンパク質Bcr-Ablの低分子阻害剤である。本論文では、イマチニブの服用中に重度のうっ血性心不全を発症した10人について報告し、またイマチニブを投与したマウスで左室収縮不全が生じたことを示す。イマチニブが投与されたヒトおよびマウス組織標品の透過型電子顕微鏡観察では、ミトコンドリアの異常や液胞と筋小胞体(および小胞体)の両方での渦状の膜集積が認められた。これは毒性ミオパシーの存在を示唆する結果である。培養心筋細胞では、イマチニブ処理によって小胞体ストレス応答の活性化、ミトコンドリア膜電位の消失、シトクロムcの細胞質への放出、細胞内ATP量の減少や細胞死がみられた。イマチニブ耐性c-Abl変異体遺伝子のレトロウイルスによる導入、小胞体ストレスの軽減、および小胞体ストレスによって活性化されるJunアミノ末端キナーゼの阻害は、心筋細胞のイマチニブ誘発性細胞死を著しく軽減した。したがってこの心臓毒性は、イマチニブによるc-Abl阻害の予想外の副作用であるといえる。

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