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幹細胞:活性酸素種はp38 MAPKに作用することにより造血幹細胞の寿命を制限する

Nature Medicine 12, 4 doi: 10.1038/nm1388

造血幹細胞(HSC)は、細胞分裂により自己複製をおこない、個体の一生を通じて血液産生を維持している。HSCの自己複製が適切に制御されることは、造血系の恒常性維持にきわめて重要である。本論文では、活性酸素種(ROS)濃度の上昇に応じて起こるp38 MAPKの活性化が、in vivoでHSCの寿命を制限することを報告する。Atm-/-マウスでは、ROS濃度の上昇がHSC特異的にp38 MAPKのリン酸化を誘導し、HSCの静止状態が維持できなくなる。p38 MAPKを阻害したところ、ROSによって誘導されるHSCの増殖能およびHSC静止状態維持の欠損が救済されたことから、ROS-p38 MAPK経路が幹細胞集団の減少に関与するとわかる。また野生型マウス由来のHSCの連続移植実験における寿命は、抗酸化剤もしくはp38 MAPK阻害剤による長期間処理で延長した。これらの結果は、p38 MAPKの不活性化が、HSCの自己複製能喪失を防ぐことを示している。今回明らかになったHSC寿命を制限する分子機構は、ヒト疾患の有効な治療法につながる可能性がある。

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