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癌と免疫:マントル細胞リンパ腫で重度のB細胞枯渇にもかかわらずおこるワクチン誘導性の腫瘍特異的な免疫

Nature Medicine 11, 9 doi: 10.1038/nm1290

T細胞プライミングにおけるB細胞の役割は不明であり、B細胞の枯渇が癌ワクチンに対する免疫応答におよぼす影響は分かっていない。いくつかのマウスモデルでの実験結果からは、B細胞は抗原について抗原提示細胞と拮抗し、Tヘルパー応答をTヘルパー2型へと偏らせること、および(あるいは)T細胞寛容を誘導してT細胞依存性の免疫誘導を抑制すると考えられている。一方、また別の結果からはB細胞はプライミングとT細胞記憶の発生に必要であると考えられている。我々はマントル細胞リンパ腫のCD20特異的抗体を基にした化学治療の後に重度のB細胞枯渇が起こったが、T細胞は正常な第一寛解期の患者で、性質のよく知られた抗イディオタイプワクチンに対する免疫応答を調べた。体液性抗原特異的応答および腫瘍特異的応答が検出されたが応答は遅れて起こり、末梢血B細胞の回復と相関が見られた。これに対して、活発なCD4+およびCD8+抗腫瘍タイプI T細胞サイトカイン応答は、ほとんどの患者で循環するB細胞がない状況下で誘導された。再発した腫瘍について調べたところ、治療を免れたことの説明となる標的抗原の変異や発現変化は見られなかった。これらの結果は、ヒトでの重度のB細胞の枯渇はT細胞プライミングを損なわないことを示している。以上の知見から、B細胞枯渇状況下でのワクチン投与は正しい処置と考えられるが、最適な体液性応答を得るにはB細胞回復後のワクチン再接種が必要かもしれない。

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