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腎疾患:慢性腎疾患におけるアンジオテンシンIIとEGF受容体の関係:新たな治療的取り組み

Nature Medicine 11, 8 doi: 10.1038/nm1275

慢性腎疾患は医療上の大きな問題であるが、その進行の機序はほとんどわかっていない。レニン・アンジオテンシン系の主要エフェクターであるアンジオテンシンII(AngII)は腎臓の劣化に関与することが知られているが、その分子経路は未だに解明されていない。本論文では、上皮増殖因子受容体(EGFR)の優性ネガティブなイソ型を過剰発現するマウスでは、AngIIを長期にわたって注入している際に腎損傷が生じなかったことを報告する。AngIIの投与により、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)とそのシェダーゼであるTACE(ADAM17とも呼ばれる)が誘導され、TACEは頂端膜に分布してEGFRがリン酸化された。AngIIによって誘導される損傷は、TGF-αを欠くマウス、またはTACE特異的に働く阻害剤を投与したマウスではかなり減少した。薬剤によりAngIIの作用を阻害するとTGF-αおよびTACEの蓄積が妨げられ、またネフロン減少後の腎損傷が防止された。これらの知見は、AngII依存性のEGFRのトランス活性化が心臓の劣化に重要な役割を果たすことを示しており、またTACE阻害剤が慢性腎疾患の進行を阻止する新しい治療薬となることを明らかにしている。

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