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トロンボキサンA2とプロスタグランジン F2αは炎症性頻拍を仲介する

Nature Medicine 11, 5 doi: 10.1038/nm1231

全身性の炎症は、頻脈などさまざまな適応反応を誘 導する。炎症に伴う頻脈は、免疫系からの炎症シグ ナルにより交感神経系が活性化された結果生じると 考えられてきたが、その根拠は曖昧である。プロス タグランジン(PG)D2, PGE2、PGF2α、PGI2およ びトロンボキサン(TX)A2を含むプロスタノイドは、 それぞれDP、EP(EP1, EP2, EP3, EP4)、FP、IP およびTPという特異的受容体を介してその作用を発 揮する。本論文では、これらの受容体をそれぞれ欠 損するマウスを用い、炎症性頻脈におけるプロスタ ノイドの役割を検討した。in vitroの実験で、TXA2 のアナログであるI-BOPおよびPGF2αは、それぞれ TPおよびFPとの相互作用を介して野生型マウスから 単離した心房の拍動数を増大させた。TPまたはFP受 容体の一方を欠損するマウスの心房では、サイトカ インにより誘導された拍動数増加が顕著に抑制され た。野生型マウスにリポ多糖(LPS)を注射して誘 導した頻脈は、TPまたはFPを欠損するマウスでは減 弱し、TPおよびFPの両方を欠くマウスではまったく認められなかった。β遮断薬であるプロプラノロー ルは、野生型マウスでLPSにより誘導される頻脈を 阻害しなかった。今回の結果は、炎症性頻脈は、全 身的な炎症状態下で形成されたTXA2およびPGF2が 心臓に直接作用することにより引き起こされること を示している。

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