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心筋梗塞:G-CSFは心筋細胞におけるJak-Stat経路を活性化することで心筋梗塞後の心臓リモデリングを防ぐ

Nature Medicine 11, 3 doi: 10.1038/nm1199

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、心筋梗塞後に損傷心臓への骨髄幹細胞の移動を促すことで心筋再生を誘導すると報告されているが、G-CSFのこうした有益な作用の正確な機構は十分解明されていない。本論文では、G-CSFが心筋梗塞後に心筋細胞に直接作用し、その生存率を高めることを報告する。心筋細胞にはG-CSF受容体が発現しており、G-CSFは心筋細胞においてJak/Stat経路を活性化した。G-CSFの投与は、心筋梗塞から3日目の時点では梗塞巣の大きさに影響しなかったが、1週間後という早い時期に心機能を改善した。また心機能に対するG-CSFの有益な作用は、投与の開始が遅れると低減した。G-CSFは、梗塞心組織で抗アポトーシスタンパク質を誘導し、心筋細胞のアポトーシスによる細胞死を抑えた。G-CSFはまた、内皮細胞のアポトーシスも減少させ、梗塞心臓における血管形成を高め、虚血性損傷を防いだ。梗塞心臓に対するG-CSFのこれらの作用はすべて、Stat3タンパク質の優性ネガティブ変異体を心筋細胞に過剰発現させると消失した。今回得られた結果は、G-CSFが心筋梗塞後に、心筋細胞と非心筋細胞との機能的連絡を介して心筋細胞の生存率を高め、左室のリモデリングを防ぐことを示唆している。

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