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血管形成:R-Rasは血管新生の全体的な調節因子で脈管内膜過形成や腫瘍血管形成を抑制する

Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1324

R-Rasは、Rasファミリーに属する低分子量GTPアーゼで細胞の生存とインテグリン活性を調節する。R-Rasに関するin vitro研究は多数行われているが、そのinvivoでの機能は明らかになっていない。本論文では、R-Rasヌルマウスを使って、この低分子量GTPアーゼのin vivoでの機能について調べた。本論文では、R-Rasが血管分化の調節因子として機能し、主として血管のリモデリングに影響を与えていることを明らかにする。R-Rasヌルマウスは、他の点では正常な表現型を示すが、過度の血管応答が見られる。また、in vivoでのR-Rasの発現は、血管の平滑筋細胞などの完全に分化した平滑筋細胞と内皮細胞にほとんど限定されていることがわかった。R-Rasヌルマウスに動脈損傷を与える、あるいは腫瘍移植を行うと、傷害に応答して過剰な新生内膜肥厚が見られ、また腫瘍では血管形成が増加した。野生型マウスでは、過形成性新生内膜をもつ平滑筋細胞および新生血管内皮細胞でR-Rasの発現が大幅に減少していた。活性型R-Rasを強制的に発現させると、増殖因子刺激を受けた血管細胞の細胞分裂活性や浸潤活性が抑制された。これらの結果は、R-Rasの血管のホメオスタシスにおける予想外の役割を実証するもので、R-Rasシグナル伝達が血管系疾患における治療的介入の標的となる可能性を示唆している。

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