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癌:子宮内膜症および卵巣の類内膜癌マウスモデルでの疾患発生にK-rasPtenが果たす役割

Nature Medicine 11, 1 doi: 10.1038/nm1173

上皮性卵巣癌は早期発見が困難であり、また前駆病巣が知られていないことや高い死亡率のために、臨床的な診断・治療上の難問となっている。卵巣の類内膜癌は子宮内膜症と関連のあることが多いが、こうした関連が生じる仕組みはまだわかっていない。本論文ではマウスを使って、腹膜子宮内膜症と卵巣類内膜腺癌の遺伝的モデルを、共に癌遺伝子であるK-ras 対立遺伝子の活性化によって初めて作出したことを報告する。また、卵巣表面上皮でのK-rasの発現、あるいはPtenの条件欠失が、卵巣に類内膜腺状の形態の前新生物性病変を生じさせることも示す。さらに、卵巣でこの2つの変異が組み合わさって生じると、侵襲性で広範な転移性をもつ類内膜卵巣腺癌が発生し、浸透率は完全で、変異誘発後の疾病潜伏期間はわずか7週間だった。本論文で報告した卵巣癌モデルは、ヒトの場合に見られる腫瘍の特異的な組織形態と転移能を再現している。

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