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白血病:急性骨髄性白血病細胞におけるHDAC阻害剤の腫瘍選択的な作用にはTRAILの誘導がかかわっている

Nature Medicine 11, 1 doi: 10.1038/nm1161

クロマチンは動的な巨大分子構造であり、エピジェネティックな修飾により特定の遺伝子発現が調節される。クロマチンの機能が変化すると、増殖関連調節因子の発現異常につながる場合があり、それが究極的に発癌にいたることもある。多くのヒト疾患はエピジェネティックな病因をもつことから、「エピジェネティック療法」の開発が進められつつある。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)は、in vitroおよびin vivoで、癌細胞の増殖停止、成熟、アポトーシスを誘導するが、正常細胞にはこういう影響はなく、現在臨床試験による検討が進行中である。今回、このような腫瘍選択性の基盤となる機構について調べた。HDACIは、p21のほかにTRAIL(Apo2L、TNFSF10)の発現をTNFSF10プロモーターの直接活性化により誘導し、それによって急性骨髄性白血病(AML)細胞とAML患者の芽球で腫瘍選択的な細胞死シグナル伝達を引き起こす。RNA干渉による解析の結果、p21の誘導、TRAILの誘導、分化がそれぞれ別個のHDACIの活性であることがわかった。HDACIは増殖停止、TRAILが仲介するアポトーシス、AML性芽球のクローン産出能の抑制を、FAB分類、核型、免疫表現型とは無関係に誘導した。また正常なCD34+前駆細胞ではアポトーシスは認められなかった。これらの結果から、HDACIの抗癌作用の介在因子はTRAILであると考えられる。

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