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脳でSocs3遺伝子を欠損させるとレプチン感受性が上昇し高脂肪食による肥満に抵抗性となる

Nature Medicine 10, 7 doi: 10.1038/nm1071

レプチンは、エネルギー恒常性において重要な役割を果たす脂肪細胞由来のホルモンであるが、レプチン抵抗性はヒトおよびげっ歯類における肥満の大部分で認められる特性である。in vitroでの解析から、Socs3(サイトカインシグナル伝達抑制因子3 )が、レプチンシグナル伝達のネガティブフィードバック調節因子であり、レプチン抵抗性に関与することが示唆されていた。我々は Socs3のin vivoでの生理機能を究明するために、Cre-loxPシステムを用いて神経細胞特異的にSocs3遺伝子を欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作製した。野生型の同腹マウスと比較して、Socs3欠損マウスでは、レプチン投与後に視床下部Stat3のチロシンリン酸化およびプロオピオメラノコルチン(POMC)の発現誘導の増強がみられ、これにより大幅な体重減少と摂食量の低下が起こった。さらに、Socs3欠損マウスは、高脂肪食による体重増加にも抵抗性であり、高レプチン血症になりにくく、またインスリン感受性が保たれていた。これらのデータは、Socs3は摂食にともなうレプチン抵抗性およびインスリン抵抗性の重要な調節因子であることを示している。今回の結果は、Socs3がin vivoでのレプチンシグナル伝達で負の調節を行っていることを実証するもので、脳での Socs3の抑制はレプチン抵抗性肥満の治療法となる可能性があることを示唆している。

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