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p38MAPKとERK-1/2を介した相反するCD40シグナルは拮抗的な免疫反応を誘導する

Nature Medicine 10, 5 doi: 10.1038/nm1045

マクロファージは、毎年50万人にリーシュマニア症を引き起こす寄生虫であるLeishmania majorの宿主となる。マクロファージが発現する共刺激分子CD40は、リーシュマニアやその他の細胞内病原体に対する、インターロイキン12 (IL-12)依存的およびインターフェロンγ (IFN-γ)依存的宿主防御免疫反応を誘導する。矛盾するようだが、マクロファージにおけるまた別のCD40誘導性サイトカインであるIL-10は、リーシュマニアの感染を促進する。CD40シグナル伝達が、どのようにしてこれら2つの拮抗的なサイトカインの分泌を調節しているかは知られていない。本論文では、弱いCD40シグナルがERK-1/2 (extracellular stress-related kinase-1/2)依存的IL-10発現を誘導する一方で、より強いシグナルはp38MAPK (p38 mitogenactivated protein kinase)依存的IL-12産生を誘導することを示す。したがって、p38MAPKとERK-1/2は、拮抗的な調節作用をもつ。リーシュマニアは、CD40シグナル伝達をERK-1/2の方向に偏らせ、IL-10を誘導する。その結果、CD40誘導性のp38MAPK活性化ならびに誘導型NO合成酵素2(iNOS-2)およびIL-12の発現が抑制される。ERK-1/2の阻害もしくはIL-10の中和により、CD40誘導性のp38MAPK活性化ならびにマクロファージおよび感受性宿主であるBALB/cマウスにおける寄生虫の殺滅が回復する。これらの結果は、CD40が関わる相反的に機能するシグナル伝達モジュールをリーシュマニアが区別して調節するという新たな免疫回避戦略を明らかにし、また免疫恒常性に対する新たな概念の枠組みを与えるものである。

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