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Toll受容体3はウエストナイルウイルスの脳内への侵入を媒介し致死性の脳炎を引き起こす

Nature Medicine 10, 12 doi: 10.1038/nm1140

蚊が媒介する一本鎖(ss)RNAフラビウイルスであるウエストナイルウイルス(WNV)は、ヒトにさまざまな重症度の疾病を引き起こす。本論文では、ウイルスの二本鎖(ds)RNAを認識するToll様受容体3(Tlr3)の、WNVの感染への関与について調べた。Tlr3欠損(Tlr3-/-)マウスは致死的なWNV感染に対して野生型マウスより高い抵抗性を示し、末梢におけるサイトカイン産生の低下とウイルス量の増加が認められたものの、脳ではウイルス量、炎症反応および神経病変が野生型マウスに比して少なかった。末梢におけるWNVの感染は、野生型マウスでは血液脳関門の破壊、および脳での感染の増強を引き起こしたが、Tlr3-/-マウスではこうした病変はみられなかった。しかしながら、このウイルスの脳室内投与に対しては、両群のマウスとも同じように感受性であった。腫瘍壊死因子α受容体1を介するシグナル伝達は、dsRNAあるいはWNVによってTlr3が刺激されたときの血液脳関門の障害にとってきわめて重要である。すなわち、WNVの感染はTlr3依存性の炎症反応を引き起こし、その炎症反応がウイルスの脳内への侵入と神経細胞の傷害にかかわっているのである。

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