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心臓を肥大させるシグナルはアディポネクチンを介して調節される

Nature Medicine 10, 12 doi: 10.1038/nm1137

糖尿病やその他の肥満に関連した病態を有する患者は、心血管系疾患の罹患率が上昇する。肥満関連疾患を有する患者では、アディポサイトカインであるアディポネクチンの減少がみられる。今回我々は、アディポネクチン欠損マウスに圧負荷をかけると、心筋における細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)シグナル伝達の増加やAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)シグナル伝達の減少に関連して、心臓の求心性肥大が強まり、死亡率が増加することを報告する。アデノウイルスを用いてアディポネクチンを補うと、アディポネクチン欠損、野生型および糖尿病db/dbマウスで圧負荷に反応した心肥大が改善した。培養心筋細胞では、アディポネクチンはAMPKを活性化し、アゴニスト刺激による肥大やERK活性化を阻害した。ドミナントネガティブ型のAMPKの導入によってこれらの影響は解消されるので、アディポネクチンはAMPKシグナル伝達の活性化を介して、心筋における肥大シグナル伝達を抑制していることが示唆された。アディポネクチンは、糖尿病やその他の肥満関連疾患にともなう肥大型心筋症の治療に有用である可能性がある。

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