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過酸化硝酸塩陰イオンによるS-グルタチオン化は一酸化窒素による動脈弛緩時にSERCAを活性化する

Nature Medicine 10, 11 doi: 10.1038/nm1119

一酸化窒素(NO)は、筋小胞体/滑面小胞体カルシウム(Ca2+)ATPase(SERCA)を生理的に刺激して細胞内Ca2+濃度を低下させ、心筋、骨格筋、血管の平滑筋を弛緩させる。本論文では、NOに由来する過酸化硝酸塩陰イオン(ONOO-)が、S-グルタチオン化によりSERCAの活性を直接高めること、またこのSERCAの修飾が、動脈硬化時には関連システインチオール基の不可逆的酸化により障害されることを報告する。精製したSERCAはONOO-によりS-グルタチオン化される。また、人工リン脂質小胞中で再構成したSERCAのCa2+取り込み活性上昇はグルタチオン存在下においてのみ起こる。SERCA上の反応性Cys674番をセリンに変異させると、これらの作用は消失した。活性酸素捕捉剤を使用するとSERCAのS-グルタチオン化とNOによる動脈弛緩が低下したことから、ONOO-は細胞内仲介物質であると考えられる。動脈硬化時には、NO依存性の弛緩ならびにSERCAのS-グルタチオン化と活性化は低下し、Cys674は酸化されてスルホン酸となっていることが判明した。したがって、反応性チオール基の疾患時の不可逆的酸化は、NO/ONOO-によるSERCAの可逆的なS-グルタチオン化および活性化を妨げることによりNO誘導性の弛緩を低下させる。

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