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体細胞変異:APOBEC変異誘発は正常なヒト小腸においてよく見られる過程である

Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01296-5

APOBECの変異シグネチャーであるSBS2とSBS13は、多くのヒトがんタイプで一般的に見られる。しかし、その変異誘発を引き起こす要因や、正常細胞からがん細胞へのプログレッションにおいていつ生じるのか、また、どのAPOBEC酵素が原因なのかは、よくは分かっていない。今回我々は、39人の小腸から採取した342の正常上皮陰窩の微細切片の全ゲノム塩基配列決定を行い、SBS2/SBS13変異は陰窩の17%に存在し、他のほとんどの正常組織よりも高頻度であることを明らかにした。SBS2/SBS13を持つ陰窩には、SBS2/SBS13を持たない陰窩が隣接することが多いため、SBS2/SBS13を引き起こす要因は細胞内因性であることが示唆される。APOBECの変異誘発は、ヒトの生涯を通じて小児期などの一時期に起こる。APOBEC1 mRNAレベルは小腸上皮では非常に高いが、大腸上皮や他の組織では低かった。この結果は、小腸での高レベルのSBS2/SBS13は、APOBEC1がAPOB mRNAの編集という生理学的機能を果たしていることによる副次的な障害であることを示唆している。

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