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老化:ゲノム規模のRNAポリメラーゼの停止が老化におけるトランスクリプトームを形作る

Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01279-6

遺伝子発現プロファイリングにより、老化に伴って変化するたくさんの過程が明らかになっているが、これらの変化を生じさせる仕組みについてはほとんど解明されていない。本論文では、新生RNAの塩基配列決定とRNAポリメラーゼIIのChIP-seq(chromatin immunoprecipitation followed by sequencing)を組み合わせて、野生型老齢マウスにおいて遺伝子発現の変化を引き起こす原因となる機構を解明する。2歳マウスの肝臓では、伸長反応を行っているRNAポリメラーゼの40%が停止し、生産的な転写が減少して、転写出力が遺伝子の長さ依存的に偏ることが分かった。我々はこの転写ストレスが、内因性のDNA損傷によって引き起こされること、また、主に分裂終了後の器官における加齢による遺伝子発現変化の大部分を説明し、これは特に、栄養感知、オートファジー、プロテオスタシス(タンパク質恒常性)、エネルギー代謝、免疫機能、細胞ストレスのレジリエンスなどの、老化の特徴的な経路に影響を及ぼしていることを実証した。老化に伴う転写ストレスは、線虫からヒトまで進化的に保存されている。従って、老化過程で確率論的に起こる内因性DNA損傷の蓄積は、基底状態の転写を低下させて、老化関連トランスクリプトームを確立し、また、老化の特徴となる重要な経路の機能不全を引き起こす。このことは、DNA損傷が正常な老化の機能変化における主要な原因となる仕組みを明らかにしている。

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