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自己免疫疾患:マルチモーダルな一細胞データで明らかになった自己免疫疾患の遺伝率の大きい免疫細胞状態

Nature Genetics 55, 12 doi: 10.1038/s41588-023-01577-7

関節リウマチなどの自己免疫疾患では、免疫系は自身の体の細胞を攻撃する。非コード領域バリアントによってもたらされる自己免疫疾患リスクが原因機序に影響する場となる細胞種や状態を正確に理解することは、治療法の開発に非常に重要である。今回我々は、12人のドナーの炎症性滑膜組織から採取した2万8674の細胞について、単一核RNAおよびATAC(assay for transposase-accessible chromatin)のシーケンシングによるマルチモーダルな一細胞データ用いて、細胞の状態を規定する遺伝子発現パターンと関連するオープンクロマチン状態の非コード領域を特定した。具体的には、多変量ポアソンモデルを用いて、単一核RNAシーケンシングデータの主成分(principal component)から、さまざまな細胞の状態によりクロマチンの開き度合いが変化するゲノム領域(ピーク)を予測した。免疫細胞タイプにおける細胞状態依存的(「動的」)クロマチンピークは、細胞状態(cs)で変化しない(「cs不変」)ピークと比較して、14の自己免疫疾患の遺伝率を説明する度合いが大きいことが明らかになった。これらの動的なピークにより、末梢性ヘルパーT細胞、制御性T細胞、樹状細胞、STAT1+CXCL10+骨髄系細胞の状態と関連する調節配列が、自己免疫疾患の遺伝的リスクが原因機序に影響する場として特定された。従って、動的な調節配列は、疾患に重要な遺伝的バリアントに多く見られる細胞状態を正確に特定する上で役立つと思われる。

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