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消化性潰瘍疾患:東アジア系特異的および祖先系集団横断的なゲノムワイドメタ解析から得られた消化性潰瘍疾患の機構に関する知見

Nature Genetics 55, 12 doi: 10.1038/s41588-023-01569-7

消化性潰瘍(PUD)は酸による消化管の損傷であり、主に胃(胃潰瘍〔GU〕)や十二指腸(十二指腸潰瘍〔DU〕)で生じる。本研究では、日本とヨーロッパのゲノムワイド関連解析(症例5万2032例、対照群90万5344例)を組み合わせて、PUDの大規模な祖先系集団横断的メタ解析を行い、祖先系集団間で高度に一致する新たな25座位を発見した。GUとDUの遺伝学的構造を調べたところ、GUとDUは同じリスク座位を持つが、GUはDUよりも遺伝学的効果量が小さく、多遺伝子性が高いことが分かり、GUの遺伝的構造の不均一性はより高いことが示された。ピロリ菌(Helicobacter pylori)の層別解析からは、ピロリ菌関連PUDに関係する宿主遺伝子座位が見つかった。バルクと一細胞でのトランスクリプトームプロファイルを用いた統合的解析では、PUD遺伝因子には、胃組織(特に、ソマトスタチン産生D細胞)で高発現する遺伝子が多いことが明らかになった。我々の結果は、胃腸の細胞分化とホルモン調節が、PUDの病因に重要である遺伝学的証拠を示している。

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