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ヒストン修飾:哺乳類におけるH3K27メチル化およびアセチル化の機能的役割をヒストン編集により解明

Nature Genetics 54, 6 doi: 10.1038/s41588-022-01091-2

ヒストンの翻訳後修飾(PTM)は、特定のクロマチン状態や遺伝子発現状態と関連している。ショウジョウバエを用いた研究により、クロマチン修飾酵素とヒストン基質の間に見られる表現型上の関連性が明らかにされてきたが、哺乳類モデルを用いた同様の研究は存在しない。ヒストンH3のリシン27(H3K27)は、PRC2(Polycomb repressive complex 2)がメチル化を、CBP/EP300がアセチル化を仲立ちする際の基質であるが、本研究では、マウス胚性幹細胞(mESC)を用いてCRISPR塩基編集を行い、H3K27が有する制御機構を調べた。H3.1および、H3.2、H3.3の対立遺伝子28個を全て変異させたpan-H3K27R(pK27R)変異体mESCを作製し、遺伝子の転写パターンや分化が、PRC2欠損変異体のそれと類似していることを明らかにした。さらに、H3K27メチル化の消失に伴う遺伝子の抑制や、エピブラスト様細胞(EpiLCs)へと細胞運命が移行する際に起きるde novoの遺伝子活性化に、H3K27のアセチル化は必須ではなかった。以上より、mESCにおいて、H3K27はPRC2に必須の基質であると結論付けられた。一方、H3K27のアセチル化や他のPTMは、CBP/EP300の機能発現に関与している可能性が高い。本研究は、哺乳類細胞におけるヒストンPTMの機能を調べるための、大規模なマルチコピー遺伝子編集が実現可能であることを示している。

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