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発生:DNA複製フォークの速度が細胞運命変化の根底にあり、再プログラム化を促進する

Nature Genetics 54, 3 doi: 10.1038/s41588-022-01023-0

全能性は胚が発生初期にのみ獲得する能力であるが、その分子基盤の特徴についてはほとんど分かっていない。本研究では、分子レベルでのDNA複製の解析を行い、多能性幹細胞が全能性様の2細胞様細胞(2CLC)へと再プログラム化される仕組みを探った。マウス初期胚の全能性細胞ではDNA複製フォークの速度が遅く、2CLCでも同様にこの特徴が見られた。これは、複製フォークの速度が、全能性様状態への移行に重要な役割を果たしていることを示唆している。2CLCはDNA複製を伴って出現し、S期初期で特徴的な複製タイミング(RT)を示した。RTの変化は2CLCの出現に先立って表れるため、RTは遺伝子発現の変化や、その結果である細胞運命の決定に関与する可能性が示唆された。実験的に複製フォークの速度を遅くすると、2CLCが誘導された。また、in vivoでの複製フォーク速度の低下は、体細胞核移植後の再プログラム化効率を向上させた。以上の結果より、複製フォークの速度は細胞の可塑性を調節しており、DNA複製機構のリモデリングは、細胞運命の変化と再プログラム化に寄与することが示唆された。

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