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穀類:穀類のリン酸再分配と登熟を調整する細胞膜輸送体

Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00855-6

リン酸は、植物の成長と作物の収量に不可欠な物質である。しかし、穀類の登熟時にリン酸の恒常性がどのように維持されているのかは明らかにされていない。今回我々は、イネの登熟の制御に関わるPHO1型リン酸輸送体であるOsPHO1;2を地図ベースのクローニングにより特定した。OsPHO1;2は、リン酸を細胞外に排出する活性を持ち、種子組織の細胞膜に局在することから、登熟中のリン酸の再分配において特異的な役割を担っていることが推測された。実際、変異型のOspho1;2を持つ発育中の種子では、リン酸が過剰に蓄積し、それによりデンプン合成に重要なADP-グルコースピロホスホリラーゼ(AGPase)の活性が阻害された。また、Ospho1;2変異体における登熟障害は、AGPaseを過剰発現させると軽減された。同様の機能は、トウモロコシのリン酸輸送体であるZmPHO1;2でも保存されていることが認められた。OsPHO1;2を異所性に過剰発現させると、特に低リン酸条件下での穀物収量を増加させたことは重要である。結論として、我々は穀類におけるリン酸輸送、登熟、リン利用効率の基礎となる機構を発見し、最小限のリン施肥で穀物収量を向上させる効率的な方法の開発への道を開いた。

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