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がんゲノミクス:個々のがんゲノムにおける調節性非コードバリアントをcis-Xで発見する

Nature Genetics 52, 8 doi: 10.1038/s41588-020-0659-5

我々は、単一のがん試料についての全ゲノム塩基配列決定データとトランスクリプトーム塩基配列決定データを統合することによって、がんにおける調節性非コードバリアントを計算的に発見する手法、cis-Xを開発した。cis-Xはまず、異常にシス活性化された遺伝子、つまり対立遺伝子特異的な発現において発現が異常に上昇している遺伝子を見つけ出す。次に、原因となる非コードバリアントを検索する。このような原因バリアントには、構造的異常によって、転写因子結合モチーフの異常あるいはエンハンサーの乗っ取りが導入されている可能性がある。13のT細胞性急性リンパ芽球性白血病の解析から、TAL1がん遺伝子をシスに活性化すると予測される頻発性イントロン性バリアントが特定された。この知見は、患者由来の異種移植片でのクロマチン免疫沈降塩基配列決定法によってin vivoで検証された。候補がん遺伝子にはプロラクチン受容体PRLRがあり、PRLRは、CTCFインスレーター近傍の境界が除去される局所的な欠失によって活性化された。cis-Xは、染色体の異数性や不均一性を示す、小児および成人の固形腫瘍に適用できる可能性がある。cis-Xは、大規模な試料コホートが必要な既存の手法とは対照的に、個々のがんゲノムにおいて調節性非コードバリアントの発見が可能である。

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