Technical Report

複雑形質:ヒト複雑形質間の遺伝的相関の高精細尤度法による推定

Nature Genetics 52, 8 doi: 10.1038/s41588-020-0653-y

遺伝的相関は、複雑形質間で共有されている遺伝学的基盤を理解するための重要なパラメータである。連鎖不平衡スコア回帰(LDSC)法は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の要約統計量を用いて遺伝的相関を客観的に(バイアスのない方法で)推定するために開発された。LDSC法は使いやすい方法であるが、LD情報を部分的にしか利用していない。そこで我々は、ゲノム全域にわたるLDを完全に考慮することで、遺伝的相関の推定精度を向上させた高精細尤度(high-definition likelihood;HDL)法を開発した。HDL法では、LDSC法と比較して遺伝的相関の推定値の分散が約60%減少し、これはサンプルサイズが2.5倍に増加したことに相当する。我々は、HDL法とLDSC法を用いて、英国バイオバンク(UKBB)に登録された30の行動および疾患関連形質間における435の遺伝的相関を推定した。2つの方法で共に検出された154の有意な遺伝的相関に加えて、HDL法でのみ発見できた有意な遺伝的相関が57であったのに対し、LDSC法でのみ確認できたものは2つにすぎなかった。HDL法はゲノム解析における検出力を向上させ、ヒトの複雑形質の根底にある関連性をより詳細に解明することができる。

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