Article

卵巣がん:進行卵巣がんにおける腫瘍–免疫の不均一性の解明により化学療法の免疫原性が明らかになる

Nature Genetics 52, 6 doi: 10.1038/s41588-020-0630-5

転移がんでは、腫瘍微小環境(TME)の不均一性の程度とその分子基盤はほとんど研究されていない。高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)のベースライン時およびネオアジュバント化学療法(NACT)中の腫瘍–免疫の界面の特徴を明らかにするために、未治療の試料と化学療法による治療前後の対になった試料について免疫ゲノミクス解析を行った。未治療HGSOCでは、同一患者内および同一腫瘍部位内に免疫細胞が排除された微小環境と炎症性微小環境が共存していることが分かり、免疫細胞の浸潤には随所にばらつきがあることが示された。TMEの細胞組成、DNAコピー数、変異、遺伝子発現についての解析から、未治療のHGSOCでは、免疫細胞の排除はMyc標的遺伝子の増幅およびカノニカルなWntシグナル伝達の発現亢進と関連していることが示された。NACTに続いて、ナチュラルキラー(NK)細胞の浸潤の増加とT細胞のオリゴクローナルな増殖が検出された。進行HGSOCの腫瘍–免疫微小環境は本質的に不均一であり、化学療法が局所の免疫活性化を誘導することが実証されたことから、化学療法は免疫が排除されたHGSOC腫瘍の免疫原性を増強できることが示唆された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度