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乳がん:ゲノムワイド関連解析による、乳がんの全般的ならびにサブタイプ特異的な32の新規感受性座位の同定

Nature Genetics 52, 6 doi: 10.1038/s41588-020-0609-2

乳がんの感受性バリアントは、腫瘍のサブタイプによってその関連の度合いの差異がしばしば認められる。本研究では、新規座位の同定を目的として、ヨーロッパ系の乳がん症例13万3384例、および対照11万3789例、さらにBRCA1変異保有者1万8908人(乳がん症例9414例を含む)を対象に、ゲノムワイド関連解析を実施した。解析は標準的な手法に加え、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ヒト上皮増殖因子受容体2型の状況、悪性度に基づく腫瘍の不均一性を考慮に入れた新しい手法を用いて行った。32の新規感受性座位(P < 5.0 × 10−8)が同定され、そのうち15座位は腫瘍の特性のうちの少なくとも1つとの関連を有していた(偽発見率 < 0.05)。5つの座位は、luminalサブタイプと非luminalサブタイプとで関連(P < 0.05)の方向性が逆であった。in silico解析では、これら5つの座位には正常な乳腺の管腔細胞と基底細胞とで状態の異なる細胞種特異的エンハンサーが含まれていることが示された。5種類の内因性様サブタイプ間の遺伝学的相関は0.35~0.80の範囲であった。既知の全ての感受性座位によって説明されるゲノムワイドなSNP遺伝率の割合は、luminal A-likeサブタイプで54.2%、トリプルネガティブサブタイプで37.6%であった。330のバリアントから構成されるポリジェニックリスクスコアでは、スコアが中等度の群と比較した上位1%群のオッズ比は、luminal A-likeサブタイプで5.63、トリプルネガティブサブタイプで3.02であった。これらの知見は、乳がんのサブタイプ別に見た遺伝的素因に関する理解を向上させ、サブタイプ特異的なポリジェニックリスクスコアの開発に役立つ有用な情報をもたらすであろう。

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