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がんゲノム:ヒトで既知の発がん物質と発がん性が疑われる物質のマウスにおける変異シグネチャープロファイル

Nature Genetics 52, 11 doi: 10.1038/s41588-020-0692-4

疫学研究から、ヒト集団でがんのリスクを有意に増加させると考えられる多くの環境因子が特定されてきた。今回我々は、20種類の既知の発がん物質、あるいは発がん性の疑われる物質について、そのうちの1つずつをマウスに慢性的に曝露させ、腫瘍ゲノムを解析した。その結果、ほとんどの物質が明確な変異シグネチャーや変異量の増加を引き起こさず、ドライバー変異をはじめとするほとんどの変異は、組織特異的な内因性の過程に起因することが分かった。我々は、コバルトや塩化ビニリデンへの曝露で生じるシグネチャーを特定し、ヒトでの別のシグネチャー(SBS19とSBS42)を1,2,3-トリクロロプロパン(ハロアルカンの一種で飲料水の汚染物質)と関連付け、ヒト腫瘍ゲノム中にもこれらをはじめとするシグネチャーを見いだした。今回の研究は、ヒトの健康に関連する一連の主要物質により誘導される、生物種横断的な腫瘍ゲノムの全体像を定義付けている。

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