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スーパーエンハンサー:WNTシグナル伝達とAHCTF1はスーパーエンハンサーによる遺伝子ゲーティングを介して発がん性MYC発現を促進する

Nature Genetics 51, 12 doi: 10.1038/s41588-019-0535-3

WNTシグナル伝達はがん細胞においてMYC発現を促進している。本論文ではこの過程に、がん化促進性スーパーエンハンサーによる、活性型MYC対立遺伝子の核膜孔への動員が関係しており、その結果、転写産物の細胞質への移送率が増大していることを報告する。MYC転写産物は、細胞質よりも、核内において迅速に分解される。大腸がん細胞では、がん化促進性スーパーエンハンサーによって核内MYC転写産物が細胞質へと搬出されることで、MYC転写産物に対する核内分解系の影響が速やかに回避されている。コンピューターモデリングによって裏付けられるように、この過程により、大腸がん細胞では健常細胞に比べて、細胞質におけるMYCメッセンジャーRNAの存在量が大きいという結果がもたらされる。がん細胞特異的なMYCゲーティング(移送の制御)は、AHCTF1(別名ELYS)が担っている。AHCTF1はヌクレオポリンを、βカテニンを介してがん化促進性スーパーエンハンサーの近傍に動員している。我々は、WNTシグナル伝達がクロマチン構造と協調して、古典的ながんドライバーの発現における転写後調節の機能不全に関与すると結論付ける。

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