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変異:ラギング鎖複製時におけるDNA損傷のバイパスにはエラーが多く、生殖細胞系列変異とがん変異を生じさせる一般的な機序となっている

Nature Genetics 51, 1 doi: 10.1038/s41588-018-0285-7

さまざまな実験系を用いた研究から、DNAに変異を生じさせる機序が明らかになっている。そのような機序として、DNA複製の誤りとDNAの損傷、およびその後の効率の悪い修復、すなわち複製のバイパスがある。しかし、ヒトの生殖細胞系列変異に対して、これらの機構が相対的にどの程度の割合で関与しているかは知られていない。本論文では、ラギング鎖上のエラーの多いDNA損傷バイパスが、ヒトの変異原として主要な役割を担っていることを示す。転写と共役したDNA修復は、転写される側の鎖に生じる損傷を除去する。一方、転写されない側の鎖における損傷は変異へと向かいやすい。ヒトにおける多型を解析したところ、転写されない鎖と複製時のラギング鎖に見つかる変異の主要なタイプは著しく似通っていた。また、がん細胞においては、DNA損傷が引き起こす変異は、複製の方向に対して非対称に集積していることが分かった。これは、DNA損傷部の修復が非対称的な方向に起こることを示唆するものである。我々は、複製が遅延すると紫外線照射による変異誘発効果が大幅に弱まることを実験的に証明し、複製を通してDNA損傷が変異に変換されることを確認した。ヒトの変異の少なくとも10%はDNA損傷から生じると推定される。

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