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エピジェネティクス:植物においてBAH–EMF1複合体よりなるポリコームを介した遺伝子抑制

Nature Genetics 50, 9 doi: 10.1038/s41588-018-0190-0

ポリコームタンパク質は、多細胞生物においてゲノムワイドな転写抑制を行う。動物では進化的に保存されたポリコーム抑制複合体2(PRC2)がヒストンH3のリシン27のトリメチル化(H3K27me3)を触媒し、そのH3K27me3をポリコーム抑制複合体1(PRC1)が読み取って効果を表すが、植物ではこのヒストンマークH3K27me3の役割は明らかにされていない。本論文で我々は、真正双子葉類であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、BAH(Bromo adjacent homology)ドメインを含む2つの相同タンパク質が、EMBRYONIC FLOWER 1(EMF1)と共に植物特異的な複合体を形成し、そのBAH–EMF1複合体(BAH–EMF1c)がヒストンマークH3K27me3を読み取って、ゲノムワイドな転写抑制を仲介する機構を報告する。さらに、単子葉類であるイネにおいて、シロイヌナズナのBAHドメインを含むタンパク質と相同なタンパク質が、やはりメチル化されたH3K27に結合してイネにおけるEMF1の相同タンパク質と複合体を形成することから、BAH–EMF1cは顕花植物に保存された複合体であることが示唆される。従って、本論文の結果より、植物特異的なBAH–EMF1cは高等植物においてPRC1様の機能を果たしていることが示され、植物と動物でPRC1活性は収斂進化を果たしたことが示唆される。

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