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脳疾患:αNカテニンをコードするヒトCTNNA2の両対立遺伝子性欠失は、ARP2/3複合体の過剰活性や皮質ニューロン移動の異常につながる

Nature Genetics 50, 8 doi: 10.1038/s41588-018-0166-0

ヒトの最も重篤な脳の発生異常には、脳回肥厚症など、ニューロン移動の異常が見られる。本論文では、これまでとは異なる脳回肥厚症の劣性遺伝型患者において、αNカテニンをコードするCTNNA2の両対立遺伝子性の短縮型変異を同定したことを報告する。CTNNA2はヒト大脳皮質に発現していて、ニューロンでの発現喪失が神経突起の安定性異常や移動の異常につながった。αNカテニンのパラログであるαEカテニンは、βカテニン活性とArp2/3のアクチンフィラメント活性の間のバランスを調節するスイッチとして機能する。αNカテニンの喪失はβカテニンシグナル伝達には影響を及ぼさないが、組換えαNカテニンは、精製されたアクチンと相互作用して、ARP2/3のアクチンを分岐させる活性を抑制した。αNカテニンのアクチン結合ドメインあるいはARP2/3の阻害剤は、CTNNA2喪失に関連するニューロン表現型を救済することから、ARP2/3の脱抑制が疾患機構である可能性が考えられた。我々の知見から、CTNNA2は、ヒトでの両対立遺伝子性変異が見られたカテニンファミリーの最初の遺伝子であり、アクチンの調節に関連がある新しい脳回肥厚症候群を引き起こすことが突き止められた。また、ニューロンでのARP2/3抑制に関与する重要な因子が明らかになった。

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