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RNAi:RNAiに基づく機能ゲノム学において、シード領域とRNA結合タンパク質との間のクロストークの複雑な関係を解く

Nature Genetics 50, 5 doi: 10.1038/s41588-018-0104-1

RNA干渉(RNAi)は遺伝子発現の変動を研究するための主要かつ強力な基盤技術であるが、オフターゲット機構による制約を受ける。細胞内RNAネットワークにおいては、RNA、低分子RNA、およびRNA結合タンパク質(RBP)間のコミュニケーションが広範に見られる。我々はこれらのクロストークに関して、「RBPモチーフ(RBPへの結合領域)と重複するシード配列を持つ低分子干渉RNAやマイクロRNAは、内在性RBPの活性を変えることによって標的外の生物学的作用をもたらす」という仮説を提案し、「内在性RBPとのクロストーク(ceRBP)説」と名付けた。低分子干渉RNA(siRNA)のオフターゲットデータ、および501株のヒトがん細胞株を用いたゲノムワイドRNAiスクリーニングにより得られたがん細胞必須遺伝子のリスト(がん依存性マップ)を体系的に分析した。その結果、シード領域–RBP間のクロストークは広く存在し、オフターゲット活性に寄与し、RNAiの効果に影響を与えることが判明した。具体的には、がん依存性マップにおける遺伝子ノックダウンとシード領域が関与するサイレンシング効果との複雑な相互作用の交錯を解くことにより、シード領域–RBP間のクロストークは増殖表現型の変動に広く寄与することが示された。これらの知見はマイクロRNA生物学に新たな局面をもたらし、またRNAi薬の改良やRNAiを基盤とする機能ゲノム学を改善する上での基礎となるだろう。

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