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膠芽腫:ChRO-seq(chromatin run-on and sequencing)から多形神経膠芽腫の転写調節の全体像がマップされる

Nature Genetics 50, 11 doi: 10.1038/s41588-018-0244-3

ヒトゲノムはさまざまなRNA種をコードしているが、解明されていないものが多い。それらを既存のゲノムツールを用いて特定することは、いまだ困難だからである。本論文では、ほぼ全ての入力試料においてRNAポリメラーゼの位置をマップできるChRO-seq(chromatin run-on and sequencing)を開発したので報告する。RNA塩基配列決定が難しい、分解されたRNAを含む試料などでも用いることができる。ChRO-seqを用いて、脳腫瘍であるヒト原発性神経膠芽腫(GBM)において、新生RNAが生じる転写反応のマッピングを行った。原発性GBMで同定されたエンハンサーの特徴は、ヒト正常脳が持つ開いたクロマチンの特徴に類似していた。悪性組織で活性化されるまれなエンハンサーでは、発生中の神経系と同様の調節プログラムが働いていた。GBMの既知のサブタイプを特徴付ける遺伝子群や、サブタイプを誘導する転写因子を特徴付ける遺伝子群について、それらを調節するエンハンサーを同定した。さらに、臨床転帰に関連する遺伝子群の発現を制御するコア転写因子群を見いだした。本研究は、GBMの転写の全体像を明らかにし、また、ChRO-seqが複雑疾患の調節プログラムのマッピングを可能にする方法であることを紹介する。

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