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心臓の再生:単核二倍体心筋細胞がどのくらい存在するかが、心臓の再生における自然にみられる多様性の基盤となる

Nature Genetics 49, 9 doi: 10.1038/ng.3929

哺乳類成体では、損傷後の心筋細胞再生は最小限であると考えられている。単核二倍体心筋細胞(MNDCM)は、成体の心臓の比較的小さな細胞亜集団であり、観察される再生の程度を説明する可能性があるが、検証はなされていない。本論文では、近交系マウス120系統について調べ、成体の単核心筋細胞の頻度に驚くほど差異があること(7倍以上)を見いだした。冠動脈結紮後の心筋細胞の増殖と心機能回復は、ともに損傷前のMNDCM量と相関した。ゲノムワイド関連研究により、Tnni3kがこの細胞組成の差異に影響を及ぼす1つの遺伝子であることを突き止め、また、Tnni3kノックアウトにより、MNDCM量が上昇して、損傷後の心筋細胞増殖が増強されることが分かった。一方、ゼブラフィッシュにおいてTnni3kを過剰発現させると、心筋細胞の倍数体化が促進され、心臓の再生が損なわれた。我々の結果は、心臓の再生にMNDCMが関係していることを実証するものである。さらに、心臓にもともと備わっている再生はそれほど限定的なものではないこと、また、人によって差異があること、そして、多数の遺伝子の影響を受けて変化する形質であると考えられた。

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