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SWI/SNF複合体:ARID1Aの欠損はエンハンサーによる遺伝子調節を障害し、マウスの大腸がんを促進する

Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3744

SWI/SNF(BAF)クロマチンリモデリング複合体のサブユニットをコードする遺伝子は、総合的に見て、全てのヒトがんの約20%において変異している。変異の標的はARID1Aであることが最も多いが、ARID1Aの不活性化によって腫瘍形成が促進される機構は解明されていない。本論文では、Arid1aがマウスの大腸でがん抑制因子として機能するが、小腸ではその機能を示さないこと、また、浸潤性のARID1A欠損腺がんがヒトの大腸がん(CRC)に類似していることを示す。一般的なタイプの腸がんにおいてはAPC/βカテニンは重要なゲートキーパーとして働くが、これらの腫瘍ではAPC/βカテニンシグナル伝達の構成因子の調節異常は見られなかった。ARID1Aは通常、SWI/SNF複合体がエンハンサーを標的に結合するよう誘導し、SWI/SNF複合体はそこで転写因子と協調して機能することにより遺伝子活性化が促進されることが分かった。ARID1A欠損細胞では、ARID1BによってSWI/SNFの機能が維持されるが、SWI/SNFの標的への誘導異常やエンハンサー活性の制御異常のため、遺伝子発現の大規模な異常調節が引き起こされる。本報告から、大腸がんモデルの研究が大きく進歩していることは明らかであり、また、ARID1Aのがん抑制因子としての重要な働きは、エンハンサーによる遺伝子調節であることが明らかになった。

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