Analysis

全がん解析:さまざまな種類のがんにおいて顕著に変異している領域を同定することにより、機能的な分子変化の全体像を明らかにする

Nature Genetics 48, 2 doi: 10.1038/ng.3471

がんの塩基配列決定を行う研究では、タンパク質を変化させる変異の知見を集積して、ドライバー変異を同定するということが中心的だった。タンパク質内の機能領域や非コード領域のドライバー配列といった未知の変化の分布を、アノテーションに依存せずに検索できる方法があれば、非常に望ましいことだろう。我々は、密度に依存したクラスター法を21種のがんに対して適用し、さまざまなサイズの顕著な変異領域(SMR)を検出した。SMRは、コード領域から非コード領域の広範囲を対象に、変化が頻発する部位を示し、ある腫瘍タイプでは、転写因子結合部位や非翻訳領域の変異が最大15%の腫瘍で起こっていた。SMRは分子ドメインや接触面での変化の空間的な集積を明らかにすることができ、これらはしばしばシグナル伝達の変化に関連していた。このようなSMRでの変異の頻度から、個々のタンパク質領域はがんの種類によって異なって変異していることが分かった。生物物理学的なシミュレーションにより変異が制御の相互作用に影響することが示唆されるPIK3CAのリンカー領域を例にこれを実証することができた。SMRの機能の多様性は、発がんにおける調節異常の機構の多様さと、機能に依存せずに行えるドライバーの同定の有利さを示している。

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