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神経膠腫:IDH1変異型神経膠腫の悪性進行を統合ゲノム解析により特徴付ける

Nature Genetics 48, 1 doi: 10.1038/ng.3457

神経膠腫は全中枢神経系腫瘍の約30%、悪性脳腫瘍の80%を占める。IDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1をコードする)の変異がある低悪性度の神経膠腫の悪性進行の原因となる分子機構を理解するために、41人の患者の腫瘍・試料対の研究で、低悪性度腫瘍試料とそれが進行して悪性度が高まった腫瘍試料の対で比較を行った。全エキソーム塩基配列決定および、コピー数、遺伝子発現、DNAメチル化のプロファイリングといった統合ゲノム解析から、起源となる腫瘍の非線形クローン性増殖が実証され、悪性進行を引き起こす発がん経路が明らかにされた。これらにはMYCやRTK-RAS-PI3Kの経路の活性化、FOXM1やE2F2が仲介する細胞周期移行の亢進に加え、ヒト胚性幹細胞においてポリコーム抑制複合体2が結合する、発生に関与する転写因子遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングが含まれる。我々の結果は、神経膠腫の悪性進行を引き起こす遺伝的機構およびエピジェネティックな機構を理解する手掛かりになるだけでなく、BET(bromodomain and extraterminal)ファミリーの阻害が治療手段になる可能性も明らかにしている。

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