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APOBEC遺伝子:ヒトがんにおけるAPOBEC3Aの高頻度変異シグネチャーは、APOBEC3Bによるバックグラウンド変異誘導シグネチャーと区別できる

Nature Genetics 47, 9 doi: 10.1038/ng.3378

がんゲノムを形作る変異誘導のプロセスを解き明かすことは根本的な課題であり、その解明によって治療、診断、予防に関わる新たな方策が導かれる。一本鎖DNAに特異的シチジン脱アミノ化酵素であるAPOBECは、いくつかの種類のがんにおいて変異を生じさせる主要因となっている。これまでの間接的な証拠からAPOBEC3Bが変異を誘導する主な脱アミノ化酵素である可能性が大きいとされたが、APOBEC3Aが果たす役割は明らかになっていなかった。このたび、脱アミノ化の基質となる、長鎖の一本鎖ゲノムDNAの生成を制御できる酵母モデルを用いて、APOBEC3AとAPOBEC3Bの変異シグネチャーが統計的に区別可能であることを示した。続いて、3つの相補的アプローチを適用して、変異シグネチャーがいずれかのAPOBECのものと類似したがん試料を同定した。驚くことに、APOBEC3Aに似た変異シグネチャーを持つ試料は、APOBEC3Bに似た変異シグネチャーの試料に比べて、10倍以上も多くのAPOBECシグネチャー型変異を含んでいた。上記の結果を踏まえて、APOBEC3Aが関わる変異誘導はかなり頻度が高いことを提唱する。というのは、APOBEC3A自体が優れたDNA切断能を示し、そしてこの切断部分の修復こそが一本鎖で高頻度に変異する基質が生成されるきっかけとなる可能性があるからである。

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