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アントラサイクリン:RARGコード領域のバリアントは小児がんのアントラサイクリン心毒性の出現を招く

Nature Genetics 47, 9 doi: 10.1038/ng.3374

アントラサイクリンは小児がんの治療プロトコールの50%以上で使用されているが、その臨床上の有用性は、アントラサイクリン心毒性(ACT)によって制限を受ける。すなわちこの薬剤を投与すると、無症候性心機能低下とうっ血性心機能不全がそれぞれ、患者の57%、16%に出現する。このACTに遺伝的関連を示す遺伝子を同定する試みが行われて研究成果が報告されているが、概して、患者数、関連の確認解析、機能検証が十分とはいえない。それゆえ、患者によってACTの出現しやすさに差がある原因は依然としてほとんど明らかになっていない。今回、小児がんの治療を受けたヨーロッパ系患者280例の関連解析、そして別個に、同様の治療を受けたヨーロッパ系患者96例および非ヨーロッパ系患者80例から成るコホートを対象に確認解析を実施した。その結果、ACTと高度な関連を示す非同義バリアント(rs2229774、p.Ser427Leu)をRARGに同定した〔P=5.9 × 10−8、オッズ比(95%信頼区間)=4.7(2.7〜8.3)〕。このバリアントによってRARGの機能が変化し、ACTの出現に関わる重要な遺伝的要因であるTop2bの発現に対する、RARGによる抑制が解除された。このことは、アントラサイクリン系薬剤が示す重篤な副作用の病態に関する新たな手掛かりとなる。

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