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多剤耐性腸チフス:チフス菌(Salmonella Typhi)の主要な多剤耐性H58クレードの系統地理解析から、大陸内および大陸間の伝播事象が明らかになる

Nature Genetics 47, 6 doi: 10.1038/ng.3281

多剤耐性(MDR)腸チフスの出現は、この疾患が風土病である多くの国に深刻な影響を及ぼす地球規模の健康問題である。本論文では、1,832のチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi:S. Typhi)試料の全ゲノム塩基配列解析から、主要な単一MDR系統H58が過去30年以内に出現し、アジアやアフリカの全域に拡大していることを明らかにした。我々の解析から、H58の多数の伝播が明らかになった。これには、アジアからアフリカへの複数回の伝播や、アフリカ内での、これまでには認識されておらず、現在も進行中のMDRの蔓延が含まれる。特筆すべきは、我々の解析から、H58系統が抗生物質感受性分離株に取って代わり、チフス菌の世界的な集団構造を変化させたことを明らかにしたことである。H58分離株は複雑なMDR配列を持つことがあり、このMDR配列はIncHI1プラスミドあるいは複数の染色体挿入部位内のどちらかに存在する。またH58系統を定義する新しい変異も同定した。今回の系統地理解析によって、MDR腸チフスの世界的な管理を促進する枠組みを作ることができ、また、この解析を同様のMDR系統の他の細菌種での出現例に適用することも可能である。

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