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DNA複製:結核菌Mycobacterium tuberculosisにおけるDNA複製の高い忠実度は、祖先原核生物の校正因子によってもたらされる

Nature Genetics 47, 6 doi: 10.1038/ng.3269

DNA複製の機構は、薬剤耐性が高まっている細菌、たとえば結核菌に対する抗生物質を開発する際の重要な標的である。DNA複製が阻害されると細胞死がもたらされるが、複製の高い再現性(忠実度)を確保する過程が損なわれると、突然変異および薬剤耐性の獲得が促される可能性がある。大腸菌Escherichia coliでは、レプリソームの校正サブユニットであるεエキソヌクレアーゼが、忠実度の高いDNA複製に必須である。ところが結核菌でこれに相当するサブユニットは、必ずしも必要とされないことが判明した。抗酸菌ではむしろ、複製ポリメラーゼDnaE1そのものが、PHPドメインに内在性の3′– 5′エキソヌクレアーゼ活性を保持しており、DNA複製を校正する編集機能をコードしていた。そして、DnaE1のPHPドメインを不活性化することで、変異率は3,000倍以上上昇した。さらに細菌類におけるDNA複製校正機能に関する系統樹解析から、大腸菌が系統学的には逸脱したものであること、そして、PHPドメインが関与する校正機能は広く保存されており、PHPドメインが実は、祖先原核生物の校正因子である可能性が示唆された。

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