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ヒトES細胞のゲノム編集:ヒト胚性幹細胞におけるDNMT1DNMT3ADNMT3Bの特異的欠損

Nature Genetics 47, 5 doi: 10.1038/ng.3258

DNAメチル化は、遺伝子発現の調節やゲノムの安定性維持に関わる重要なエピジェネティックなDNA修飾の1つである。本論文では、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)に対してゲノム編集ツールCRISPR/Cas9法を使用し、メチル化活性を示すDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)の3種類すべてを不活性化し、これらの酵素が果たす役割と、これらによって特異的にメチル化されるゲノム領域の実体を詳しく調べた。DNMT3AもしくはDNMT3Bのどちらかを欠損させた場合、あるいは、両方を欠損させた場合のどちらにおいても、生存能力のある多能性細胞株が樹立された。これらの細胞株ではDNAメチル化の状態に明確な影響が認められたことが、全ゲノムのバイサルファイト処理塩基配列決定により明らかになった。驚いたことにDNMT1の欠失は、マウスでの知見と異なり、ヒトES細胞の急速な細胞死を招いた。この即時致死性を克服するため、ドキシサイクリン応答性のtTA-DNMT1*救出細胞株を新たに作製し、ホモ接合性のDNMT1変異体株を樹立することができた。ところが、外来性DNMT1*の発現をドキシサイクリン存在下で抑制すると、DNAメチル化の急速かつ全体的な喪失が惹起され、続いて大量の細胞死が引き起こされた。今回の結果は、DNMT変異体ES細胞の包括的な特性解析の1つとなるものであり、これらの酵素によって特異的な修飾を受ける領域についての1塩基レベルのゲノム地図も得られている。

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