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鉤虫:人獣共通感染鉤虫であるセイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)のゲノムとトランスクリプトームの解析から感染特異的な遺伝子ファミリーが明らかになる

Nature Genetics 47, 4 doi: 10.1038/ng.3237

鉤虫は4億人以上の人に感染しており、成長障害や栄養不良を引き起こしている。鉤虫ゲノムの塩基配列解読や、感染過程で鉤虫が発現する遺伝子の発見は、鉤虫に対する新しい薬剤あるいはワクチンの考案に役立つと考えられる。セイロン鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)は、他の鉤虫とは異なり、ヒトにも他の哺乳類にも感染することから、鉤虫症の実験室モデルになっている。本論文では、セイロン鉤虫の313 Mbのゲノム塩基配列を決定し、また、感染期間中の30,738遺伝子の発現についてのトランスクリプトームデータを示す。ASP(activation-associated secreted protein)のサブファミリーと考えられるASPR(ASP-related gene)を含む、約900の遺伝子がin vivoの初期感染過程で上方制御された。初期感染過程で下方制御される遺伝子にはイオンチャネルやGタンパク質共役受容体が含まれていた。このような下方制御は寄生性および自由生活性の両方の線虫において観察された。その後、多量の吸血が開始すると、C-レクチン遺伝子や、これまでには報告されていないタンパク質ファミリーをコードするSCVP(secreted clade V protein)の遺伝子群が上方制御された。これらの知見は、新しい薬剤やワクチンの標的を示しており、また、鉤虫症の発症機序の解明に役立つと考えられる。

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